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      Copyright © 2012 by Morgan Rice

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      本書はフィクションであり、作中の名称、登場人物、社名、団体名、地名、出来事および事件は著者の想像または創作です。実在の人物・故人とは一切関係ありません。

      目次

      第一章

      第二章

      第三章

      第四章

      第五章

      第六章

      第七章

      第八章

      第九章

      第十章

      第十一章

      第十二章

      第十三章

      第十四章

      第十五章

      第十六章

      第十七章

      第十八章

      第十九章

      第二十章

      第二十一章

      第二十二章

      第二十三章

      第二十四章

      第二十五章

      第二十六章

      第二十七章

      第二十八章

      「王冠をいだく頭は、ついに安らかに眠るということがない。」

      —ウィリアム・シェークスピア

      ヘンリー四世、二部

      第一章

      少年はリング(環)の西王国の低地でもっとも高い丘に立ち、北に向かって最初の太陽が昇る瞬間を見つめていた。らくだのこぶのようにうねり、広がる緑の丘が、上下しながら谷や峰へと連なるさまを、見える限り遠くまで。昇る日が放つ灼けるようなオレンジ色の光が朝もやの中にとどまり、きらめいて、光に魔法をかけているようで、それが少年の気分と調和していた。少年がこれほど早く起き、家からこれほど離れた場所まで出かけてくるのはめずらしい。 そしてこれほど高い場所に登るのも。父の怒りを買うことはわかっていた。だがこの日はそんなことは気にならなかった。今日は、この14年間彼を押さえつけてきた無数のきまりや仕事を無視した。いつもとは違う日だからだ。彼の運命がやってきたのだ。

      マクレオド族が住む南の地方、西王国のソアグリン。ソアと呼ばれるのを好むことで知られていたこの少年は、4人兄弟の末っ子、父親からは一番嫌われていた。ソアはこの日が来るのを予想し、一晩中起きていたのだ。寝返りを打ち、目をかすませながら、最初の太陽が昇るのを心待ちにしていた。こんな日は数年に一度しかやってこない。そしてそれを逃したら、この村に埋もれたまま、一生父親の羊の群れを世話しながら暮らす運命にあるのだ。考えただけで耐えられないことだった。

      徴兵の日。それは軍隊が村々を勧誘して回り、王の軍団、リージョンの新兵を選ぶ日だった。ソアはそれだけをずっと待ち望んできた。彼にとって人生とはただ一つ、2つの王国中最高のよろいを身にまとい、選りすぐりの武器を帯する国王の精鋭部隊、シルバー騎士団に入団することだった。まず14歳から19歳までの従者の集団であるリージョンに入らなければシルバー騎士団に入団することはできない。そして貴族や有名な戦士の息子でない限りリージョンに入る方法はなかった。

      徴兵の日は唯一の例外だった。何年かに一度、リージョンの人数が少なくなってくると、国王の兵隊が新しい入隊者を求めて国中探し回るのだった。平民からはほとんど選ばれないことを誰もが知っていた。そして実際にリージョンに入隊する者は更に少ないことを。

      ソアは立ち尽くし、何か動きがないかと地平線を一心に見つめていた。シルバー騎士団が、この、村へと続く唯一の道を通ることはわかっていた。自分が最初にそれを見きわめる者でありたいと思った。連れてきた羊たちは、山を下りて草がもっと上等の低地に連れて行けとばかりに、周りでうるさく、不平がましい声を一斉にあげて抗議し始めた。ソアは雑音と悪臭を締め出そうとした。集中しなければならない。

      何年もの間、羊の群れの世話をし、気にもかけてもらえず重荷ばかり背負わされる、父親や兄たちのしもべとして仕えてきた日々。それを耐えうるものにしてくれたのは、いつかこの地を離れるのだという思いだった。いつか、シルバー騎士団がやってきて、自分を見くびっていた者たちを驚かせ、選ばれる。素早い動きとともに、彼は騎士団の馬車に跳び乗り、全てのことに別れを告げる。

      ソアの父親はもちろん、自分のことを真剣にリージョンの候補として考えてくれたことなどない。実際、何かしらかの候補として考えたことさえなかった。代わりに、父は自らの愛情と注意をすべて3人の兄たちに向けていた。一番上の兄は19歳で、他の兄たちはそれぞれ1歳ずつ離れていた。ソアは一番下の兄とも3歳も離れていた。皆、年が近かったためか、それとも互いに似通っていてソアだけが似ていなかったためか、3人はいつも一緒で、ソアの存在など認めてもいないふうだった。

      そのうえ、彼らはソアよりも背が高く、体格も良く強かった。ソアは、自分の背が低くはないのはわかっていたが、彼らと並ぶと自分が小柄で、筋肉質の脚も彼らのオーク樽のようなそれに比べればかよわい気がしていた。父親は違いを縮めようとするどころか、むしろそれを楽しんでいるようにさえ見えた。兄たちは家に残して鍛え、その間ソアには羊の世話をさせ、武器を研がせる。話に出たことはなかったが、ソアが出番を待つばかりの人生、兄たちが立派な功績を挙げるのを見ているだけの人生を送ることはいつだって理解していた。父や兄たちが自分たちの思い通りにするのであれば、ただそこに居て、この村に飲み込まれ、家族が要求する助けを与えるのがソアの宿命だった。

      もっと悪いことには、兄たちが皮肉にも彼に脅威を感じ、恐らく憎んでもいるのをソアは感じ取っていた。兄たちが自分を見る視線や仕草の一つ一つにそれが見て取れた。どうしてかはわからないが、ソアは彼らに恐れや嫉妬のような何かを感じさせた。 それはたぶん、彼が兄たちとは違っていて、似てもいなければ、話し方にも兄たちの独特の癖がなかったからであろう。着るものさえ違っていた。父は紫や緋色のガウン、金箔を施した武器など、一番良いものを兄たちのために取ってしまい、ソアには最も粗末なぼろの服しか残されていなかった。

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